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2006/12/06 VOL 14 スロッターズ忘年会 |
とうとう今年も残すところあと僅かとなった。世間では師走の忙しさというか、なんとなく街が騒がしく感じられるが、この時期というと忘年会のシーズンでもある。一年のお疲れを癒す為、一年の嫌な事を忘れる為に酒の力を借り、パーッと弾けようっていう例のアレだ。 オレの働いているクサレ職場にもこの忘年会という行事があって、毎年、上司の号令で開催されるのだが、これがもうとにかく酷い。 本来、忘年会というものは楽しくお酒を飲んでガヤガヤとたわいも無い会話で盛り上がるものだと認識している。今年は大変だったな、まあ一杯飲んで、とか、嫌な事は忘れて今日は楽しもう、とか、時には上司の悪口をこっそり呟くもそこは無礼講、今日だけは許そうじゃないか、とか、社会でオレのような底辺でペーペーの人間がこの時だけは心の底から楽しむという行事であるはずである。 ところがである。うちの会社ときたら忘年会という名を借りた説教会。楽しいもクソも微塵に感じられない、もはや拷問といっても過言では無い会なのだ。 ここぞとばかりハゲの上司がでしゃばってきて、今年もオマエはダメだったな、とか、俺がオマエの年くらいにはコレだけやったぞ、とか、まぁ、ぶっちゃけ皆の前で問題社員を吊るし上げる会となっていて、その主な人間というのはオレなのである。 確かに仕事に関して無能だ。仕事中、息抜きにエロ本を見たりもするし、「昼下がりの団地妻」というタイトルの動画を会社のパソコンで見たり、昼休みにスロットをやっててそのまま仮病を使って早退したりしたが、オレだってがんばっているのです。一生懸命やってるんです。ふざけないで下さい。 そんな忘年会が今年もまた開催されるという告知をされたので、もはや今から気が気でない。今年はどんな罵倒が待っているのか、どんな辱めを受けるのか不安で仕事も手につかない。 そんな気分で毎日を過ごしていると鬱病にでもなってしまうので、気分転換にとパチスロ関連の本を読みながら仕事をしているフリをしていると、例のクソ上司が薄ら笑いを浮かべながらオレのデスクへとやってきた。 （チッ、何しに来たんだよ・・・・・。まさか忘年会で言うはずの説教を前もって言いに来んじゃねぇだろうな？） 笑みを浮かべている上司のその顔はどこをどう見ても寸借詐欺師そのものなのだが、その薄ら笑いがかえって不気味さを増し、なにか怒られるんじゃないか？ひょっとして師走にクビ宣告か？と、ビクビクしていると、 「今度一緒にスロットを打たないか。最近さぁスロットにハマっててねぇ〜、イロイロ教えてくれよ」 とか言ってくるではないか。コレには驚いた。この上司というのは真面目一直線で生きてきた野郎でパチンコ・パチスロは勿論、競馬もやった事の無い人だ。宝くじでさえ全く興味を示さないので、こいつは本当に人類か？と、疑った事も一度や二度ではないほどだ。 それがどうだ？、確かに先ほどオレに「スロットを教えてくれ」と言ってきた。一瞬、耳を疑ったが、間違い無くスロットにハマって・・・、なんて言ってた。 （ナニィ？スロットを始めたのか？その歳で？？まぁ、教えてやらん事でもないけどなぁ・・・。うんうん、そうかそうか、教えて欲しいかスロット。じゃあ、一緒に打ちたいのなら軍資金の10万円もただちに上納せよ！） と力強く言ってやろうかと思いましたが、ここでフと疑問がよぎった。 一体全体何が彼をそうさせたのだろうか？今までギャンブルに無縁だったヤツがどういうキッカケでスロットにハマッたのか。いい年こいて今頃スロットを始めた？？何故に？？ 大体だな、以前の上司なら「オマエはパチスロばっかりやってるからダメなんだ」と酒の席なんかで呆れるほど説教をしてた男なんだぞ。 それが今や「一緒に打ちに行こう」、「イロイロ教えてくれよ」、と、まるで血を分けた兄弟かのように言って来る始末。 （なんなんだよアンタ？いつだってそうだ！自分の都合しか考えてないじゃないか！・・・・・ん？ちょ、おまっ、ひょっとしてとんでもない事件に巻き込まれてお金に困り、パチスロというギャンブルに走ってしまったのではないか？） 不安に駆られながらさりげなくキッカケを聞いたところ、どうも理由というのが上司には大学に通う息子がいて、まぁ、このデキの悪い息子がパチスロにハマりまくって度々仕送りの金を使いきってしまい足らないといってお金をせびるようになったらしいのだ。 んで、上司としては自分の息子がハマるパチスロっていうものがどんなものなのかと、一度、息子と一緒に打ってみたところ、これがマグレ大勝ちだったらしく、あっという間に大金をせしめる事に成功し、以後、スロット（北斗の拳SEのみ）を打つようになった、との事らしい。 「そん時に47連荘もしちゃってさぁ、もう、息子はスゲー、スゲーって騒ぐし、コインはジャラジャラと出続けるし、もう参っちゃったよ！意外と簡単なんだな、パチスロって」 とか、もう心の底から憎らしい、舐めくさったコメントを付け加えてくるハゲ上司。許されるなら残り少ないその髪の毛を今すぐ毟り取ってやりたいと思ったが、チョッと待て。ヤツはまだスロットを始めたばかりの素人だ。パチスロといえば北斗の拳SEしか知らない人間である。当然、高確率モードとか前兆モードとかレア小役によるモード移行率など詳しいゲーム性も知らないと考えられる。 これはチャンスである。天がオレに与えた大いなるチャンスである。オレのエクセル脳細胞が次のような作戦を素早く弾き出した。 まずコイツに媚を売りながら一緒に打ちに行く。んで、ヤツが打ってる台に2チェや強スイカなどレア小役が出現した場合、その台は今の時間帯はハマる可能性があるから、などとウソをつき台移動を促す。上司が真に受けて台移動したらソッコーゲット。牛歩打ちをしながら様子を見つつ時間稼ぎをし、前兆に入ってなければそのままヤメて次を待つ、前兆に入ってれば、かかる時間帯が来た！、とかテキトーな事を言いながらバトルボーナスゲット！鼻歌交じりでウハウハ。悪魔も逃げ出す完璧な作戦だ。 このような戦略を瞬時に立てられる己の才能に改めて酔いしれた。完璧じゃねぇか、これなら勝ったも同然だな、と余裕の表情を浮かべつつ、勝利で掴んだお金で乳が揉めるお店にでも行こうかしら、なんて考えていた。 ところがである。 この野郎、とんでもない曲者で、早速、その日の夕方にこの上司と一緒に打ちに行ったのだが、2チェやスイカをキッチリ目押しするばかりか、レア小役を引くたびに前兆に移行してないかゲーム数カウントをしてる始末。そう、ゲーム性を完璧に把握してるのである。 「なにっ！台移動しろって？今辞めたらハイエナされるだろ！」 「なにっ！時間帯だぁ？オマエはバカか！」 「オマエは今までスロットをそんな風に打ってたのか！時間帯でかかると思ってたのか！だからいつも負けるんだよ！！だから仕事もダメなんだ！！」 とか、もう言いたい放題。咥えタバコでボタンをネジりながら打ってる姿はまさにアウトロー、ついこの間までパチスロ素人として生きてきた人間とは到底思えず、完璧なスロッターと見てとれる。アンタ一体何者なんだよ！ （あっ、いやっ、違うって！！いやいや、アンタを騙そうと思ってそう言っただけやん！） そんな事を正直に言えるわけでもなく、あっそうなんですか、知らなかったッス・・・・エヘヘッ、なんて白々しく苦笑いしか出来ないオレ。うわー腹立つ。何なんだよこの歯がゆさは！ そんなこんなでオレの大切な諭吉様を3枚ほど失った挙句、パチスロ歴ン十年のオレに向って、たかがパチスロ歴数週間のハゲにオカルト信者ばわりされるという屈辱を受け、店を出た後もヤツの自慢話を長々と聞かされるハメに・・・・・。。 一方的にしゃべりまくる上司のクソ話がやっと一息ついた帰り路、ハゲが最後に一言ボソリと言ってきました。 「今年の忘年会が楽しみだな。そん時に一からスロットを教えてやるよ、わははははははっ！！」 ・・・・・えーと、忘年会までにブードゥー教をマスターしたいと思います。 |
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