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777タウンネット

2007/01/17 VOL 16 スロッターズ新年会


皆様、新年あけましておめでとう。

今年の正月は天気も良く、初詣やらは沢山の人たちが繰り出したと何処かのテレビで見た。晴れ着姿でおみくじを引く若い女子の姿やお参りをする姿が想像つく事だ。

そんな中、オレはというと元旦早々から営業していた近所のパーラーへと足を運び、初詣?何それ?みたいな感じでスロットを打ち倒し、新年早々、51,000円という大金をせしめる事に成功!初戦を白星で飾れる素晴らしい元旦であった。

それでまあ、正月ということで親戚やらが集まり、宴会があるというので夕方には撤退したのだが、そういえば昨年の暮れから酒を飲む機会というのがとにかく多くて、そこら中で飲みまくっていた。おかげで二日酔いになってしまう事がほぼ毎日続いているほどだ。

以前は、1日スロットを打ち倒し、居酒屋で浴びるほど酒を飲み、夜のネオン街へ繰り出すという、人間らしさの欠片も無い鬼畜生活をしてても何とも無かったのだが、最近では飲みすぎると直ぐに眠くなったり、次の日に二日酔いになったりと、もう若くないな、と感じずにはいられない。体なんてどうなってもいいと若い頃は思っていたが、最近は成人病とかが気になって仕方が無い。

そんな冬休みも終り、仕事という奴隷生活が本年も始まったのだが、オレの職場には新年会というものがあってな、ついこの前に忘年会という吊るし上げ会をやったばかりだというのに、また新年会という名のもとの吊るし上げ会をやろうというのだ。分かってるんだ、どうせ「今年こそはしっかり仕事をせよ!」と説教染みたイヤミを言うに決まってるのだ。

とまあ、そんなわけで新年会ではアホみたいに酒を飲む上司どもがガバガバと飲みまくり&注ぎまくり攻撃を仕掛けてくるので、まあ結局のところいつもの如くアルコール漬けとなってしまった。

(ハァ・・・、最近は飲みすぎだし、とりあえず今日のところはこれで帰るとするか)

二次会の話題で盛り上がっている同僚達に紛れて帰り支度をしていると、我が職場を牛耳るバラモス上司が、

「あっ、おい!(グエッ)、これから二次会だからな!おまえ行くだろ?」

とか言ってきた。いやいや、オレだって都合というモノがあるのだ。ココ最近お酒を飲みすぎて肝臓が悲鳴を上げてるし、正月にお金もいっぱい使っちゃったし、何よりも上司と一緒に酒を飲むのが一番気分悪いし、それでまあ丁重にお断りをしたのだ。そしたら、

「バカヤロウ、オマエから酒取ったら何が残るんだよ!ホラ行くぞ!今日は全部オレのオゴリだっ!げははははははははっ(オエッ)」

とか言ってます。いきなりバカヤロウ呼ばわりか、調子こきやがって、死ね!薄らハゲ!とか思ったのだが、いやいやチョット待てよ。酒に酔ってるとはいえ、なんか全部オゴリだとか言ってるではないか。金は全てオレが出すとおっしゃってるではないか。コイツもなかなか良い事を言うものだ。

よーし、こうなればオレも徹底的に飲んでやろうではないかと誓うものです。エラソーに調子こきやがって、呼び止めた事を後悔させてやるぜってなものだ。

キサマの財布ごと飲み込んでやるわって勢いを隠しつつ、「じゃぁ行きますんで・・・」と本当に弱々しく演技をする自分に酔いしれ夜のネオン街行きのタクシーに乗り込んだ。

歓楽街を彩るテカテカと光る看板を眺めながらどこか冷めた目をして歩いていた時である。前を歩いていた上司が「ここに入ろう!」とか指差すので見てみると、目の前に飛び込んできたのは「外国人タレントクラブ」という文字。決して健全とは言えない繁華街でなんとか学園とかセーラー服何とかという、いかがわしい店舗が軒を連ねる中、ヤツが選んだのは「外国人タレントクラブ」という店。

上司が言うにはここは色々な国々の女性の方が集まりお酒を注いで雑談をする店で、まあ早い話が、「タレント」と煽ってはいるがそんなものはタレントでも何でもなく、ただ単に日本人ホステスが外国人に変わっただけという店舗のようなもの。

オレかてお酒とかは好きな方だが、あまりキャバクラとかいうものは好きではない。ましてや、外国人がいる店舗は決して入ることがないと心の中の壁があって、普段ならそのまま素通りするのだが、今日は上司のオゴリだし新境地を見てやろう、心の中の壁を壊してやろう、と入店することを決意したのだ。

「イラシャイマセ!、アナタハダレカ?」

席に案内され片言の日本語でそんな事を言ってくるヨーロッパ系の女性。あなたは誰か?って・・・、そんな事を聞かれても困る。アンタこそ誰なんだ?

「コレ ノンデ クダサイ」

そういってビールを注いでくる彼女。片言の日本語で所々よく理解できないのだが、どうやら出身はルーマニアという国らしい。で、家族の生活を支える為につい最近日本に来たらしく、日本語も上手く話せないことがわかった。

最初こそは「何でこんなところで飲まなきゃいけないんだ」、「オイオイ酒飲みながら日本語のレッスンかよ」とか思ったのだが、なんか話をしているうちに彼女のことが不思議と健気に思えてきて、言葉も文化もまだよく分からない異国の地で一生懸命に働くその姿に心奪われそうになっていた。

「キヲツケテ コボレルヨ」

「コレ、オイシイヨ」

「シガー カラダニ ヨクナイヨ」

とか、その後もオレを気づかって精一杯な日本語で話し掛けてくるのである。多分、店からそう教え込まれているのだろうけど、恥ずかしのを紛らわす為かオレの携帯電話のストラップをゴニョゴニョと触りながら一生懸命もてなそうと努力しているのが伺えた。その姿を見ているうちになんだか感動すらしてしまった。

お酒の力も加わったのか、その後はムチャクチャ楽しい時間を過ごす事ができた。オレが優しく話し掛ければ彼女ははにかみながら満面の笑みで答えてくれる。もはやこの二人の間には客と店員という壁はなく、まるで恋人同士が普通に過ごしているようだった。そう、これは紛れもなく恋である。

しかし、時というのは残酷だ。国際LOVEのお手本とも言うべき二人、赤い糸で結ばれてるとしか言いようがない、そんな二人の間には過酷な現実が待っていた。そう、閉店というお別れの時がやってきたのだ。

遠い異国で運命的な国際出会い。そして、知ってる限りの日本語で出来る限りの優しい言葉を言ってくれる気遣い。人とはこんなにも優しくなれるものだろうか?それほどまでにオレは愛情に餓えていたのだろうか?酒とスロットに明け暮れるオレのようなカスのために楽しい時間をありがとう・・・。
あれ?何だか前が見えないぞ?この目から溢れ出る液体はなんなんだ?こっ、これが涙というヤツか?早く店を出よう・・・、別れるのが辛くなりそうだ。

「そうだ!コレ君にあげるよ」

店にいる中、オレの携帯電話に付いているストラップがよほど気に入ったのか、しきりに触ったりして気になる様子の彼女であった。その携帯ストラップをプレゼントしようと考えたのだ。決して高価なものではないが、今のオレと彼女の間柄にはこのチンケなストラップも世界で一番輝くダイヤよりも価値があると思う。これが今、オレに出来る最大限のお返しだった。これを見る度にオレの事を思い出してくれという思いを込めて。何だかまた目頭が熱くなってきたが、グッと我慢し、ストラップを渡した。

すると・・・、

「コレ、ゴミ、ワタシ、イラナイ!!」

と、キッパリと受取拒否!

おいおい、いくらいらなくてもこういう場面では受け取っておくものだろう。今は笑顔で受取って後でコッソリ捨てろよ。日本のキャバ嬢は皆そうだぞ!ちょっとは気を使えって!ゴミってお前、ストレートすぎやしないか?

店の出口まで見送りで出ていた彼女、オレと彼女の間には恋だとか愛だとか、そういったものは初めから存在せず、オレの携帯電話をひっきりなしに触っていたのは営業電話をかける為に電話番号を聞き出そうと焦っていたのだろう。それが失敗に終わり、ガッカリしたような、それでいて少しふてくされている表情を浮かべていた。

「よ〜し、今日はココで解散!楽しかっただろ!今年こそはお前も仕事がんばって、また一緒に飲もうや!!がははははっ!!、・・・・・・あっ、今の店、5000円な!!」

一人上機嫌のクサレ外道が当たり前の様にそう言ってきた。えっ?5000円?おごりって言ったやん!

(ダマサレタ・・・・・)

いつの間にか人の数も少なくなったネオン街。冷えたアスファルトの道路を一人トボトボと歩きながら夜空に輝く星空に今年の意気込みを誓いました。


「コトシモ シゴト ゼッタイ サボル」

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