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2008/07/11 VOL25 幻の男 |
サラリーマンにとって日曜日の午後六時頃というのはチョットした鬱時間帯である。 オレの場合、明日からまた地獄の仕事が始まるのかと思うと嫌でたまらなく、毎週この時間帯になると必ず何処かへ逃亡してしまおうかと思いながらも結局はダラダラと日曜の夜を過ごしている。 今週の日曜日もそうだった。いつものように昼頃に目を覚まし、つまらないと思いつつもそれが義務かの如くスロット店へ入り、チンケな勝負事で時間を過ごし夕方頃に帰宅、サザエさんを見ながらビールを飲むのである。 2本目のビールに手がかかり、丁度、テレビで波平がカツオを叱り飛ばす場面になったところで、フと、ある1人の男のことを思い出した。今から20年程前の話である。 前にも話した通り、当時の自分のパチライフはハネモノを中心にピヨピヨとあちこちのシマを動き回っていたのだが、これらハネモノ台をいかにして「打ち止め」させるか?ということを常に研究していた。当然のようにパチンコ雑誌を本屋で買い漁り、隅々まで読みふけっていたものだ。 今でこそパチンコ・パチスロ雑誌というものが数社から毎月あるいは隔週ペースで発行されており、新機種情報や解析数値などキチンとしたものが載って発行されているが、オレがパチンコ、パチスロにのめり込んだ頃は、まだまだパチンコ専門雑誌というものが少なく、スロットに至っては、パチンコ雑誌の片隅にチョロッとリール配列などを載せたモノが数ページ載っているだけの状態であった。 ちなみに、当時の雑誌やパチンコ攻略本の内容というのは、「良いクギ調整」と「悪い釘調整」といった写真が載っている比較的まともなものから、雨の日は湿気で盤面が緩みクギがヌルくなるから雨の日を狙え!とか、ハンドルを回し続けると電圧が上がりすぎて玉の軌道に変化が起きるからハマる!などといった胡散臭いものまで平然と記されていた。中には何故か水着の少女の写真が無理矢理に掲載されていたりと、全くパチンコに関係ないものまであり、もはややりたい放題な内容であったように思える。 そんな中、幾つかの雑誌をパラパラめくっては、いかにしてビッグシューターのパンクを回避できるか、という研究をしていたのだが、ある日、とある一冊のパチンコ雑誌を手に取り、いつもの如く本屋で記事を立ち読みしていると、衝撃的な記事内容に目を疑った。 10年間無敗の男 この内容を見た瞬間、正直ビックリした。10年間パチンコをやってて一回も負けたことがないというのである。記事内容に釘付けになったオレはもう気が気でない。早速その雑誌を購入し部屋で読みふけった。 やはりパチプロという人は負け知らずなのだ、こういう上手い人もいるんだな、と当時の純粋無垢なオレは記事の内容を鵜呑みにし、ワクワクしながら読み込んでいくと、さらに衝撃的な内容が・・・・・。 これ、オレの地元やん! なんとまぁ、記事の内容から察するにその無敗男プロの行きつけの店というのが、地元の駅前にあるJという店で、オレも何度か足を運んだことがある店であった。 当時のその店は、駅前という好立地条件ということもあってか客もそこそこ入ってはいたが、それゆえ殿様商売じゃないがあまり出しているような感じも無かった。実際、オレは何度か足を運んだが行くたびに負け、その度に隣のダイエーで晩飯代わりにたこ焼きをヤケ食いした後、(今日はパチンコは行ってないんだ。風俗行って金を使ったんだ)とパチンコで負けた記憶を力ずくでねじ伏せ、風俗に行って楽しんだ事にして、駅裏のソープ街をゾンビのように徘徊しながらトボトボと帰り、オナニーに明け暮れるという苦い思い出が記憶に残っている。 (オイ、マジかよ!あの店で10年間無敗なのか?よほど上手いんだろうなぁ・・・・) 地元の事が載っていた事で更に興味が出てきたオレは、それからはその雑誌、というよりもそのページだけを読むようになり、遂にある決断をしたのである。 (実際に逢ってパチンコ上達のコツを教えてもらおう・・・) 当時オレが住んでいた所から店までは近いところにあったし、何度か行った事のある店だったのである程度の事情もわかる。雑誌にはその無敗男プロの顔写真まで載っていたので見間違える事もなかろう。 とある日の午後、暇だったオレは意気揚揚としてその店に行ってみた。雑誌の内容によるとどうやらハネモノの「スーパーブラザーズ」を中心に打っているようだったので、すぐさまハネモノコーナーへと歩を進めた。 雑誌に掲載されてた無敗男の写真を見る限りは年齢は40後半か50代前半くらい、大仏ヘアで魚釣り師がかけるような大きな色眼鏡をかけ、パッと見は露天とかでイカでも焼いてそうな感じの男と伺え、そのへんで打ってるボンクラオッサン共とは明らかに一線を画している。 (今日もザクザク玉を出してやがるんだろうなぁ・・・・、いいなぁ、ちっくしょー!絶対に勝てるコツを見つけてやるやい!) そう心に決め、打っている客の一人一人をゴルゴ13の如くロックオン。早速、無敗男を捜し始めた。 ところがである。いくら探しても雑誌に載っている人物が見当たらないのだ。それこそ他のハネモノのシマは勿論、デジパチのシマ、一発台のシマ、更にトイレまで見に行ったのにそのような人物は見当たらなかった。 (おかしいなぁ?もう勝って帰っちまったのか?) 午前中にハネモノを打ち止めさせ、とっとと帰ってしまったんだと勝手に思い込んだ当時のオレは仕方ないから出直すことにして、その日は少しハネモノを打っただけで帰る事にした。 数日後のある日、駅へ行く用事があったのでついでに例の店を覗いてみることにした。この前は見当たらなかったが今日は逢えるだろうと、またしても浮かれた気持ちでフラフラと店へと入ったのだ。 ところが、どういうわけかこの日もどこのシマを捜してもそれらしき人物が見当たらない。 (おいおい、またいねぇのかよ!クッソー、こうなったら毎日店を覗き、絶対見つけ出してやるぜ) そう誓ったオレはそれから数日間、時間帯はバラバラではあるが暇があるとその店を覗くようにし、休みの日は朝から入店するというスタイルで地獄の張り込みを続けたのだが、見つけ出すことができなかったのである。 (おかしい・・・・・?朝イチから晩までどの時間帯に来ても居ねぇぞ?、ひょっとしてオレは店を勘違いしているのか??・・・いやいや、ココに間違い無いはずだが・・・・・、) そんな不安に駆られながらも、その後も捜索を度々していたのだが、遂にその無敗男には一回も逢う事が出来なかったのである。 その後、他の雑誌から何年も負けたことが無いなんて云々といった批判記事を目にしたオレは、(確かにそうだよなぁ・・・・)と妙に納得し、いつしか無敗男の事もすっかり忘れ、店へも行かなくなってしまった。 あれから20年程の月日が経ち、今こうして昔の記憶を掘り起こしていると、果たして本当に無敗だったのか?あの名前はパチンコ常勝から取ったネタ名なのか?つーか、あなたは本当に存在していたのか?と、今更ながら聞きたい事が山ほどある。が、オレの中で幻の男となった今ではその質問の答えは永遠にわからないだろう。 当時のパチンコ屋には胡散臭い人間というものは沢山存在していたが、オレの中では彼こそダントツでナンバーワンであり、永遠の漢でもある。 そんな昔話で1人感傷に浸りながら残りのビールを飲み干したところで、テレビではオレの気持ちが伝わったかのように波平が大声で叫んでいた。 カツオーッ!カツオはどこじゃー!、と。 |
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