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2006/03/18 VOL 3 逃げ遅れ・・・ |
あれはまだ、パチスロという存在を知らない時だった。当時、オレは世間で大人気だった大一商会の「ニュービックセブンPart4」というデジパチに夢中だった。 知らない人も沢山いると思いますので簡単に説明すると、今の機種のように長ったるいリーチ演出や予告演出などは一切なく、ただただデジタルがピヨピヨと回るだけで、パッ、パッ、パッ、とデジタルが無機質に停止し、それを繰り返しているだけの、今から思うとあっけらかんとした機種だった。 それまでのデジパチといえばストップボタンが付いてて当たり前だったが、この、ニュービックセブンPart4には付いてなかった。しかも数字のデジタル部分がドット式という、今の時代にとってはなんでもない、むしろ古臭い表示であるが、当時はそれが新鮮でまたたく間に市場へ広がっていった。 さて、そんなある日の事、いつものように意気揚揚とパチ屋に入りニュービックセブンのシマへと歩を進めた。2シマ、合計36台あるニュービックセブンは人気の為か何時行っても混んでて、この日も空き台が無い状態だった。 シマの中央へゆっくりと歩きながら出玉状況などを確認していると、なんとまぁ、奥から2台目に運良く一台の空き台があるじゃないか。 (うおっー、ラッキーだぜ!) 早速、台を押え大量の100円玉に両替し腰を下ろした。 (これだけ混んでて空き台が残っていたのはラッキーだったな、残り物には福があるなんていうし、ひょっとして・・・、よ〜し、今日は出しまくって帰りにエロ本でも買っていくかー、わはははははははっ!) 軽く舐めきった妄想と股間を膨らませてサンドにお金を投入するオレ。しかし、この台選びが地獄の始まりだった。 人気のある機種、混んでいるシマ、その中で1台のみポツンと空いている。冷静に今考えると、これは何かの罠かもしれない。とんでもなくデジタルが回らないとか、故障しているとか、地縛霊がとりつくとか、そういったことが容易に想像できる。 しかし、当時はデータ表示機などもないし、何より「早く打ちたい」という欲求が先に動いてしまった。釘なんかどうだっていい、折角来たのにこれを逃すと今日は打てないじゃないか、当時のオレはそう感じていたと思う。 黙々と投資をし続けていると、けたたましい音とともに333の大当たり! (ラッ、ラッーキーナンバーだ!) 今でこそ無制限とか出玉移動OKとか当たり前になっているが、当時のパチ屋ではこのラッキーナンバー制というものをとっている所が多かった。この店では333、555、777、で大当たりすると持ち球で続行可能、444、999、でラッキーナンバー制が終わり出球交換、その他の数字はその都度交換というシステムである。そんな負け要素たっぷりの制度で交換率2.5円のこの店での持ち球遊戯は有利であった。 (随分と投資してしまったがラッキーナンバーとは・・・、よーし、ココから挽回してやるぜ!) と意気込みながら内心ホッとして大当たりを消化していた。すると・・・・・、 ガシャーーーーーーーーン!! 突然、隣の台からもの凄い音がした。何事かと思い反射的に右隣に目を向けると、隣で打っていたオッサンが拳で台のガラスを叩き割っているではないか。己が打ってた台に制裁を加えるかの如く一撃の正拳、店内に響くガラスの割れる音、そして拳を下ろすその姿を見て、ワナワナと震えが込み上げてきた。 (やべぇ、893や!) ガッチリとした体格、じゅうたんのようなパンチパーマ、睨みつける鋭い眼光、ガラスを叩き割っておきながら平然としている精神など、どこをどう見てもその筋の人である。まさに鬼、そう、地獄の鬼そのものだった。 (随分とハマッてたみたいだけど、後からきたオレが先に大当たりしたので頭にきたのか?もし、そうなら次の一撃はこのオレ・・・?逃げたい、今すぐにでもママのいるお家に帰りたい、けど今は大当たり中・・・、パンクするのも出玉を捨てるのも嫌だ・・・。あぁ、どうしたらいいんだ・・・。) 不安に駆られながら成すすべも無くビクビクしていると、店員らしき人が駆け寄ってくるのがわかった。 (お願いします、店員さん、そのオッサンを何処かへ連れてってくだせぇ、すぐにでもこの場から消してください・・・。あっ、でも、このオッサンの姿を見て店員もビビッてしまうんじゃないだろうか、相手が相手だしなぁ・・・) そう思いながら、ハンドルを握ったまま、なるべく隣の成り行きを見ないようにしながら耳をダンボにしていると、 「オイ!ちょっとコッチに来てくれっ!」 と、意外にも割と強い口調で、それでいて冷静に注意しているではないか。地獄の鬼相手に「オイ!」とまで呼んでいるのである。 (すごい!なんて勇気のある人なんだ!相手を恐れる事も無く立ち向かうこの店員はまるで神の化身じゃなかろうか) そう思い、怖いながらも何処か安心してしまったオレは、「ありがとう店員さん、助かったよ。きっとあなたは三蔵法師のような方なんでしょうね」と店員に手を合わせたい気持ちで目を向けるとその姿を見て再び震えが込み上がってきた。 (あっ、あんたも懲役面かい!) 店内にいるペーペーの店員とは明らかに違うスーツ姿で、これまた敷き詰めた芝生のようなパンチヘアー、鋭そうなその目は睨みつけただけでガラスなどコッパ微塵に砕けそう。客のオッサンが赤鬼ならこの人は青鬼、地獄の鬼2人が一発即発に睨み合っている。 「おう!弁償かっ!!いくらでも弁償したるぞ、ゴラァーーーー!!」 「事務所まで来いやっ!!」 「なにっ!ここで払ったるわ!幾らや!金額言わんかいっ!!」 「おんどれっ!!!さっさと事務所来い!」 いつの間にか回りの客が席を離れており半径1.5m程の空間が作られ、大勢のギャラリーが事の成り行きを見守っている。赤鬼が発するいかずちのような怒声と青鬼の発する地響きのような唸り声が入り混じり、嵐の空間が出来ている。オレの隣で・・・・・。 地獄の赤鬼VS青鬼、怒号の嵐、その中で逃げ送れたオレ、ダンゴムシのように丸くなっているオレ。間違いなくショック死できる状況だった。 多分、あのギャラリー全員が「あの小僧、何やってんだ」とか「この状況でパチを止めないとは相当なバカかパチンコオタクだな」と思ったに違いない。 うん、オレだって逃げたかったけど逃げられなかったんです・・・・・。 |
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